兄さん、お元気ですか?僕はとっても元気です。
兄さんが居なくなってしまってからもう随分経ちましたね。
色々あったけれど、僕は今とても幸せです。
学園に来たばかりの頃は弱音を吐いてばかりだったけど・・
今の僕はあの頃よりずっと強くなったと思うのです。
そんな僕を見たら・・兄さんはどう思うでしょうね。
喜んでくれるでしょうか・・それとも、寂しいって言ってくれるんでしょうか。
昔の僕は、兄さんしか頼れる人が居なかったから。
だから、きっと喜んでくれる・・って、僕、そう思うんです。
昔は「兄さん、兄さん」ってそればかり言っていたけど・・
今は「お姉ちゃん」に変わったの。・・なんだか不思議だって、自分でも思います。
それから・・「好き」には二つ種類があるって聞きました。
ヒトの事を知るために色んな本を読んだけれど・・僕にはまだまだ知らない事が沢山あるみたい。
知らない事が沢山、知ってる事が増えていくと、何だか毎日楽しいんです。
兄さんにも、また色んな事・・教えてあげますね。
でも・・何だかんだ言ってもほんとうは、まだ怖いんです。
僕一人だけ幸せになってしまうことが。
兄さんを忘れない為に、或いは自己暗示の為に・・こうして手紙に書き留めてはいるけれど・・
僕は自分の考えていることが何より分からないのです。
人の顔色を窺うのは得意なクセに、ね。
それに・・・
いえ・・やっぱり、これ以上暗いことを書くのはやめておきます。
「僕は強くなった」って、さっき僕自身が手紙に書いたばかりでした。
もう兄さんに心配は掛けられないものね。甘えていてはいけない。
ああ、そういえば・・
最近お絵描きの練習を始めたんですよ。
まだまだ下手だけど・・もっともっと上手くなれれば良いな、って思ってるんです。
この世界はとっても綺麗で、素敵な人が沢山いるから・・
僕の目に焼き付けた風景や表情を、絵で表したいなって。
今はまだ下手だけど・・絵を一緒に送りますね。・・笑っちゃ嫌ですよ?
それじゃあ・・またなにかあればお手紙書きます。
何処に居るかわからない兄さん。
貴方の無事と幸福を祈って。
廻琉
(手紙には3枚の紙が添えられている。
一枚は尻尾に青いリボンを付けた白猫。
もう一枚には空と太陽、そして見覚えのある人物が数人。
最後の一枚には、緑髪の少女と手を繋ぐ少年が描かれていた。)PR